【科学選書Vol. 6】高校で教わりたかった生物 感想・レビュー

スポンサードリンク

この本は日本と台湾の教科書を比較し、それぞれの長所と短所を教えてくれる。

日本の教科書は台湾の教科書に比べて、とても詳しくその仕組みなどの情報が載せられている。

しかし、日本の教科書には大きく欠けている部分があるのだ。

それこそが「ヒトの生物学」である。

それでは、「ヒトの生物学」とはなんなのか?

それは実際に活用されている技術であったり、私たちの生活に関わる身近な問題点のことである。

例えば生物の呼吸の1つ、発酵について。

日本の教科書を見れば、その仕組みを簡単にではあるが、理解することはできる。

しかし、発酵がパンやアルコール飲料にどのように使われているのかなどの記述は少ない。

今やっている生物の応用が身近なところにたくさん溢れているにもかかわらず、そのことに気づきにくいのではないだろうか。

一方、台湾の教科書は実際に技術を使って働く人のインタビューや、倫理問題、環境問題、さらには避妊の仕方まで教えてくれる。

何のために生物学を学ぶのか?

今の日本の教科書で高校生たちは、その答えにたどり着きにくいのかもしれない。

別に生物なんて学ばなくても生きていける。

そう思っている子も多いのではないでしょうか。

学ぶことはその人を豊かにしてくれるにも関わらず、それでは自ら学んでいくという姿勢は生まれにくいかもしれない。

また、大学の入試問題に出題される問題は私たちの身近に溢れる技術や生活の問題ではない。

教科書に載っている基本的な事項についてがほとんどである。

大学受験が終われば生物は必要ないのだろうか。

そんなことはない。

私たちは地球に生きる動物の中の1つであり、生き物である。

生き物が生物を学ぶ必要が無いのだろうか?

この本を監訳、編著された松田良一氏は世界の高校生たちがその知識を競い合う国際生物オリンピック(IBO)の引率者でもある。

そんな松田氏が世界の高校生物を見て、日本の生物には「ヒトの生物学」が必要だと訴えておられる。

子供たちに自発的に学ばせ、考えさせるのであれば、今よりも大きく教科書を変えていかなければならないのかもしれません。

1.本を読んでみて。。。。。。

本の初めの部分は、「ヒトの生物学」に関する台湾の教科書の翻訳であり、日本の教科書との違いを教えてくれます。

日本の教科書は読み進めば理解することができます。

しかし、台湾の教科書は今までやってきた知識は身に付いている前提で話しかけてきます。

より高度な部分まで教えてくれる代わりに、詳しい仕組みはほとんど載っていません。

身近な技術に特化した形になっているのです。

食品、医療、環境問題について自ら考えさせ、自発的に仕組みは調べさせるというもの。

こうすることで、自発的な勉強を実現することができます。

しかし、今の日本ではどうやっても無理かもしれません。

ただ、時代に合わせ教育も変わっていくべきです。

今は昔に比べ、ネットが誕生し、情報が溢れています。

スマホを使えば、どんなことでもすぐに調べられる時代、子供たちは昔よりもしっかりと学ばなければ、何が正しいのかわからなくなってしまいます。

私たち大人であっても、こんなにも情報が溢れてしまっているので、正しい情報をすくい出すのは一苦労です。

正しい情報収集の仕方、時代に合った勉強の仕方、それぞれをしっかりと大人たちが考え、子供たちに教えていかなければいけません。

また、日本の教科書は海外の生物に比べ、ウニの発生などは詳しく載っているにも関わらず、人間の発生については全く詳しくありません。

性教育は保険の時間で簡単に教えていますが、海外では避妊の仕方まできっちりと生物で教えているのです。

HIVだってウィルスだし、性教育も本来ならば生物の分野のはずです。

日本は保険と生物で情報が解離してしまっているんです。

最近はネットを使えば、未成年であろうが、性に触れることは簡単になっています。

あなたは18歳以上ですか?と問われるだけで、身分証のチェックなんかは全くないのだから。

テレビが昔よりも規制が厳しくなっても、昔よりもはるかにネットでは過激な性に関する情報が溢れているのです。

そんな状況であるからこそ、もっとしっかりと性教育もしていかなければならないのではないでしょうか。

これからはもっと生物が身近な存在になるといいですね。

生物を教える人にぜひ読んでいただきたい1冊です。

2.本の詳細

『高校で教わりたかった 生物』

趙 大衛 編集
松田良一監訳、編著
日本評論社
2017年6月25日初版

スポンサードリンク