食品会社で使われるカタラーゼ検査とは?元大手お菓子メーカー勤務が解説!

2019年11月3日食品の科学

私は以前食品会社に勤めていたということもあり、まず初めの記事として食品会社では欠かせない科学のお話をさせていただこうと思います。

毎日食べる食品ですが、知らないこともたくさんあるのですよ!ぜひ、この記事を読むことで見方を変えていっていただけたら幸いです。

スーパーやコンビニなどでたくさんの食品がならんでいますが、私たちが安心して食べ物を食べれるように食品会社では日々いろいろな検査が行われています。

細菌検査や日持ち検査などなど、私たちが何不自由なく安全に安心して食品を食べられるのは、しっかりとした検査が行われているからなんです。

そして、その中でも簡単でかつ重要な検査を今回はご紹介しましょう!

その検査とは『カタラーゼ検査』です!!皆様はご存知でしょうか?

このカタラーゼ検査を行えば、もしも食品に異物(生物由来:虫、髪の毛など)が混入してしまった場合、その異物が火が通る前なのか、それとも火が通った後なのか?を確かめることができるのです。

食品において、異物は決して入ってはいけません。

しかし、どんだけ対策し、気を付けていても異物が入ってしまうことはあります。

最近はあまりニュースなどで取り上げられは無くなってきていますが、常にそのようなことは起きています。

ただ、入ってしまいました。それは仕方のないことだからと言って何も改善をしないままに放っておいては会社をつぶすことになりかねます。

食品に異物が入ってしまうということは信用問題に大きく関わってきますので、もう二度と同じ過ちを繰り返さないためにも会社は調査と対策は欠かすことができません。

もし、食品に異物が入ってしまったとしましょう。

すると、まずは対策をうつためにも、どの場面で入ったかを確かめる必要があります。どこで異物が入ったかわからなければ、対策のしようがありませんよね。

そこで、カタラーゼ検査を使えばどうでしょうか?

カタラーゼ検査を使用すれば、商品を焼いた前なのかそれとも商品を焼いた後なのか、というように大まかにではありますがどの場面で入ったのかを突き止めることができます。

では、今回はその『カタラーゼ検査』とはどのようなものなのかを簡単に説明していきましょう。

1.過酸化水素水の化学反応

カタラーゼ検査は、過酸化水素水が分解される以下の化学反応を利用しています。

2H₂O₂ → 2H₂O + O₂

異物に過酸化水素水をかけることで、酸素の発生を見るという検査です。

過酸化水素水は殺菌効果を有しているため、消毒液や衣類漂白剤に含まれています。

皆様も経験したことあると思いますが、消毒液を傷口に塗ったときにプクプク泡が出ることがありますよね。

それは、過酸化水素が分解されたことによって出てくる酸素というわけです。

また、これらに含まれている過酸化水素水は低濃度であり、濃度が高くなるととても危険な液体です。

常温で液体であり、酸化力がとても強く、もし濃度が高い過酸化水素が手に触れてしまうと真っ白になり、かなりの痛みに襲われるので本当に気を付けなければいけない液体です。

では、なぜ異物に過酸化水素水をかけると酸素が発生するのか?

そこには多くの生物の持つ酵素『カタラーゼ』が鍵となってきます。

まさに消毒液を塗った時のプクプクがなぜ起こるのか?ということなんですが、解説していきましょう。

2.酵素『カタラーゼ』

酵素とは反応を触媒するタンパク質でありカタラーゼはそのタンパク質の一種で、上記の過酸化水素水の化学反応を触媒する酵素です。
(触媒とは化学反応を速めてくれることです。)

このカタラーゼは全酵素の中でも代謝回転数が最も高いという面白い酵素で、細胞に含まれています。

なので、異物が生物由来(髪の毛や虫など)のものであった場合、過酸化水素水をかけると生物の細胞に含まれるカタラーゼによって過酸化水素水が分解され、酸素がたくさん発生するというわけです。

しかし、それだけでは異物に火が通ったのかどうかなんてわかんないじゃないか?と思われるのではないでしょうか?

なぜ、わかるのでしょう?そこには、タンパク質と熱の関係があります。

3.タンパク質の熱変性

ここで、タンパク質の特性について少し触れておきましょう!

タンパク質は熱が加わると変性してしまいます。卵を思い出してください!

熱を加えた後、目玉焼きになると冷やしてももう元の生卵の状態には戻らないですよね。固まったままになってしまいます。

つまり、酵素も同じくタンパク質であるため、熱が加わると変性しその性質は失われてしまうのです。

4.なぜ焼成前か焼成後かがわかるのか?

生物由来の異物がもし、焼かれる前に入ったとしましょう。

そうすると、異物には熱が加えられているということになりカタラーゼは効果を失っていますよね。

このことを酵素の『失活』と呼ぶのですが、つまり、焼かれた異物に過酸化水素水をかけても酸素がほとんど出てこないのです。

もちろん、火が通っていなければ酸素の泡が沢山出ます。

酸素がたくさん出れば⇒焼成前、

酸素が出なければ  ⇒焼成後

というわけです。

異物に過酸化水素水をかけるだけという簡単なカタラーゼ反応!簡単に行うことができる検査であるが故にとても重要な検査というわけです。

5.そもそも生物はなぜカタラーゼを持っているのか?

ここでふと疑問に感じた方が居られるのではないでしょうか。

なぜ最初にお話ししたように危険な過酸化水素を分解する酵素を生物は持っているのか?

それは、生物はエネルギー代謝によって発生する過酸化水素を速やかに分解しなければいけないからです。

私たちは酸素を取り込み二酸化炭素を吐き出す呼吸をしていますよね。

それは、エネルギーを得るためには酸素が必要だからです。これを『好気呼吸』と呼びます。

そして、そのエネルギーを得る時に過酸化水素のような活性酸素と呼ばれ、細胞を傷つけてしまう物質が発生してしまうのです。

そんな時に役に立つのがこのカタラーゼ。過酸化水素水はとても危険なので、速やかに分解しなければいけません。

酵素の中でも代謝回転数が高い理由も何となくわかってきますよね。

他にも過酸化水素を分解するペルオキシダーゼのような酵素も存在しており、ぜひ、調べてみてください。生物は本当に面白いですよ!

カタラーゼ検査はこういった生き物がもつ酵素を上手く利用した検査なのです。

5.さいごに

この『カタラーゼ検査』は全ての生物由来の異物に使えるというわけではありません。

また、過酸化水素水は危険ですし、異物が混入していたからといってご家庭で自分でやってみるというのもお勧めしません。

もし、買った食品に異物らしきものが入っていた場合には、きちんと販売元へ連絡し対処してもらいましょう。

SNSで拡散されることも多いですが、会社には沢山働いている方がおり、食品会社は特にイメージ第一ですので、最悪その行動が沢山の方の職を奪ってしまうことにもなりかねません。

絶対に異物が入らないように食品会社はすべきだし、入っていた場合には大変嫌な思いをするのはわかりますがSNSでの拡散はしない方が良いと思います。

また、食品は人が作っています。お店であっても工場であってもそれは同じです。

工場やお店で働く人々は、毎日、細心の注意を払って生産してくれています。しかし、それでも異物は入ってしまうのです。

だって人が関わっているのだから。

今自分たちが美味しい物にありつけているのは必死に働いてくださる人々のおかげということを忘れず、万が一異物に出会ってしまった時にはこの記事のことを思い出して対応していただきたく思います。

今回出てきた酵素や触媒がいまいちわからない方もおられるかと思いますので、今後酵素のお話もしていければと思います。

⇩酵素についての記事。

体にとって大切な酵素とは?触媒について