優性遺伝子は顕性遺伝子に、劣性遺伝子は潜性遺伝子へ。メンデルの法則について

2018年9月9日生き物の科学

去年のお話(2017年9月)にはなりますが、新聞で大きく取り上げられ、話題になったニュースがありました。

それが、優性遺伝子を顕性遺伝子に、劣性遺伝子を潜性遺伝子へと遺伝学用語を改訂するというものです。

日本遺伝学会より発刊された「遺伝単~遺伝学用語 対訳付き~(生物の科学遺伝別冊)」でのこのような提案を受け、話題になりました。

優性遺伝子と劣性遺伝子は、私たちが生物を勉強するならば必ず習う用語ですよね。

この常識ともいえる2つの用語が変更されるとなると、もちろん大きな衝撃とともに話題になるはずです。

日本遺伝学会は、形質に優劣があるわけではないが、優性と劣性という言葉がそのイメージを付けてしまっており、劣性遺伝子により発現する形質が、あたかも劣った形質であるという勘違いが生まれてしまうと主張しています。

私自身は言われるまで、そう思ったことも無ければ、気にしもしていませんでしたが、どうやら世間の声は違うようです。

このようなことを受けて、以前から変更を主張されていたこの優性遺伝子と劣性遺伝子をマイナスイメージを与えにくい顕性遺伝子と潜性遺伝子に変更していこうと大々的に報じられました。

しかし、実際には日本人類遺伝学会の公式HPで報道についての一部を否定しており、教科書がすぐに変わるなどということは無さそうです。

なんだかややこしいお話ですよね。

まぁことの真相は分かりませんが、今回はこのニュースをより理解するためにも、優性遺伝子と劣性遺伝子、遺伝学の始まりともなった”メンデルの法則”を簡単に紹介していきたいと思います。

1.メンデルの法則

メンデルの法則とは、オーストリア帝国で植物学の研究をしていたグレゴール・ヨハン・メンデルがエンドウ豆を研究することで導き出した法則です。

そして、このメンデルが提唱した法則は3つあり、その3つとは、優性の法則、分離の法則、独立の法則で、この3つをまとめてメンデルの法則と呼ばれています。

1800年代の当時、メンデルが唱えたこの3つの法則を誰も理解することはできませんでした。

しかし、1900年代に入ってきてから状況は一変し、ド・フリース、チェルマク、コレンスの3人によってメンデルの法則の3つの法則がそれぞれ別々に再発見されたのです。

こうしてメンデルの法則は改めて正しいことが証明され、現代の遺伝学の祖とも呼ばれる法則ということがわかりました。

地動説もメンデルの法則も、進化論も偉大な説は、このように最初は受け入れられないことが多い気がしますね。

そもそもメンデルがこの法則を発見するまでに遺伝子の概念がなかったのか?というと、そうではありません。

形質が遺伝するということは薄々わかっていましたが、そのことを明確に証明することができなかったのです。

そんな中、なぜメンデルはこの法則を発見できたのか?

メンデルはまず、エンドウに現れる形質(花に色や種子の形、背丈など)を選抜し、純系を作ったのです。

それまで遺伝を証明するために行われてきたのは、形質が混じったもを使用していました。

つまり、雑種が使われていたということです。

しかし、メンデルが使用したのは純系だったのです。

これが、メンデルが偉大な法則を発見できた”鍵”となったわけですね。

それでは、それぞれの法則について説明していきたいと思います。

2.優性の法則

エンドウ豆には様々な形質が見られます。

その中の花の色を例に挙げて、優性の法則を説明していこうと思います。

エンドウ豆の花の色には紫色と白色があり、それぞれの遺伝子を紫色はA、白色はaとしましょう。

まず、純系である親世代はP世代と呼び、P世代同士で交雑させていきます。

親世代は純系ですので、遺伝子はもちろん紫色の花の個体はAA、白色の花の個体はaaということですよね。

この純系の親を交雑させていくわけです。

そして、このようにP世代の交雑によってできた子供の世代をF1世代と言い、この世代は全て紫色の花しか咲かせないのです。

遺伝子で見るとAaという風になります。

次に、このF1世代をさらに交雑させていきます。

すると、その子供たちの世代には紫色の花はもちろん、白色の花もでてくるのです。

この世代はF2と言い、形質の割合でみれば、紫色:白色 = 3:1。

紫色の遺伝子はAaとAAが考えられ、白色はaaしかありません。

以上のことからも、紫色の形質を持つ遺伝子は白色の遺伝子よりも優性に発現することが分かります。

また、メンデルはエンドウの花の形質だけではなく、種子の形の色や背丈なども徹底的に調べた結果、どの場合にもこの法則が当てはまったため、優性の法則が成り立つということを証明したのです。

説明したように、優性の法則で出てきた花の形質では、決して白色の遺伝子が無くなったというわけでは無く、隠されてしまっているのです。

つまり、紫色のAは優性遺伝子、白色のaは劣性遺伝子となるわけで、今回のニュースでも問題になった部分ですよね。

花が白い形質が劣っているというわけではもちろんなく、A遺伝子に隠されてしまっているだけです。

そのため、顕性遺伝子、潜性遺伝子と言った方が分かりやすいのではないか?と今回遺伝学会が提案したわけですね。

人間にも優性遺伝子、劣性遺伝子の形質は多くあり、耳の形や顔の形、まつげやくせ毛などにも適用されると言われています。

くせ毛や丸顔などが劣っている形質ってわけでは間違いなくありませんよね。

3.分離の法則・独立の法則

メンデルの法則は、優性の法則だけではありません。

分離の法則と独立の法則も含めて、”メンデルの法則”です。

まず、分離の法則とは、例えば親が持つ遺伝子がAaの場合、生殖細胞にはそれぞれが片方ずつしか含まれないということです。

つまり、Aとaが一緒になって生殖細胞には含まれず、分かれて遺伝するというのが分離の法則です。

そして、次に独立の法則とは、2つの対立遺伝子が異なった染色体上にある時、それぞれ独立して生殖細胞に分配されるということです。

例えば、優性の法則で説明した花の色の形質の遺伝子と、種子の形や色の遺伝子はそれぞれ別に考えられるというわけです。

紫色でしわしわの種子もあれば、紫色で丸い種もあり得るし、白色で丸やしわしわの種子だってあり得るということになります。

つまり、それぞれの形質を示す遺伝子は独立した存在だというわけですね。

このようにメンデルは現代の遺伝学の祖とも言える重要な法則を見つけ出しました。

もちろん、このメンデルの法則には当てはまらない場合も多くあります。

しかし、重要な発見であったことには間違いありませんね。

4.メンデルの法則が当てはまらない時

メンデルの法則は必ずしも当てはまるとは限りません。

その代表的なものが、オシロイバナです。

赤や白の花を咲かせるオシロイバナですが、赤と白の花の形質をもつ個体同士を掛け合わせると、ピンクの花を咲かせるのです。

このような場合を不完全優性といいます。

マルバアサガオなどもこの例に当てはまり、優性遺伝子の働きが弱かったり、抑制する働きが起こるため、形質がまじりあった色の花を咲かせるのです。

この他にも性染色体の伴性遺伝や、同じ染色体上に2ないし3つの形質を示す遺伝子がのっている連鎖などがありますが、今回はこの辺にしておきましょう。

5.さいごに

劣性遺伝子は優性遺伝子によって隠されてしまっている形質なだけで、決して劣っている形質ではありません。

確かに顕性遺伝子と潜性遺伝子を使えば、そのような誤解は生まれないかもしれませんね。

しかし、きちんと言葉の意味を理解して学んでいれば、そのような誤解が生まれることはそもそも無いし、急いで修正しなければならない問題ではないのかもしれませんね。

教科書が改訂される日はくるのでしょうか。

今後とも注目していきたい話題でした。