なぜ胃は胃液に溶かされないのか?消化とは

2020年3月23日身体の科学

私たちは毎日生きるために食事をしています。

口に食べ物をいれると、もぐもぐ歯で噛むことによって細かく砕かれることになります。同時に唾液によって分解され胃へと送られてゆきます。

しかし、歯による砕きと唾液による分解では、まだまだ腸で吸収するには不十分。

そこで、さらに分解するために強力な酸である胃酸で食べ物を溶かし胃から出てくる消化酵素が分解してくれるのです。

そして、このように胃液と消化酵素によってかなり細かく分解された食べ物は腸へと送られていきます。

実はこれだけ分解してもまだ不十分であり、この後腸でもさらに分解され細かくなりやっと食べ物は吸収され体のエネルギーへとなっていくのです。

つまり、食べ物も一筋縄では吸収できないということ。

ん?まてよ。ここで、ふと疑問に思うことがあると思います。

胃では強力な酸が出されているのですよね?じゃあ胃自体も溶けちゃうんじゃないの?

人間を構成しているのは鋼鉄や金のような強固な金属でもガラスでもありません。酸に弱いタンパク質です。

では、なぜ胃は溶けずに食物だけを溶かすことができるのでしょうか?

解説していきましょう。

1.胃

一番初めにも言いましたが食道から送られてきた食べ物は吸収できるようにかなり細かく分解して吸収しなければいけません。

そこで重要なのが胃の働きであり、胃は大きく分けて2つの方法を駆使して食べ物を消化しています。

それが『化学的消化』と『機械的消化』です。

それぞれどのような消化なのでしょうか?

1-1.化学的消化

化学的消化では胃酸を分泌することに加えペプシノーゲンという酵素を分泌し消化しています。

胃酸の成分は塩酸であるためpH1~2の強酸です。そのため食物を溶かすことができます。

ただ、胃酸で溶かすだけでは腸で吸収するにはまだまだ不十分。なので酵素であるペプシノーゲンが活躍しなければいけません。

ここでちょとまて、ペプシノーゲンって酵素だよね?酵素ってことはつまりタンパク質だろ!じゃあ、胃酸によって失活してしまうんじゃあないか!!

と考えると思います。

しかし、このペプシノーゲンはそうではないのです。なんと、ペプシノーゲンは酸性で活性化し食べ物を分解してくれるのです。

なぜ活性化するのかと言いますとペプシノーゲンは酸性による構造の変化を逆に利用しているのです。

ペプシノーゲンは酵素、つまりタンパク質ですのでもちろん強酸によって構造が変わります。つまり、変性するというわけです。

本来、強酸性にさらされた酵素は変性し、構造が変わってしまえば、その役割を失い失活してしまいます。

ただ、このペプシノーゲンは構造が変わることでペプシンとなりタンパク質を分解する酵素として働くのです。

このように胃酸とペプシノーゲンによって化学的消化は行われるのです。

では、次に機械的消化とはどのような消化なのでしょう?

1-2.機械的消化

食べ物は胃で消化され腸に送ることになるのですが、胃に貯められてから送られます。

胃の出口の幽門という場所をきっちりと閉めることで胃から出ないようにせき止められるのです。食後お腹が膨れている状態。

このようにせき止められた食べ物たちを何もせず、ただただせき止めて胃酸やペプシノーゲンで消化するなんて効率が悪いですよね。

そこで、胃がぜんどう運動をしだします。ぜんどう運動とは胃が伸びたり縮んだりすることで食物を撹拌する運動。

こうして十分に食物が消化されゲル状になると、再びぜんどう運動によって腸へと運ばれていくのです。

このようにぜんどう運動で行われる消化の補助的な役割を機械的消化と呼んでいます。

それでは、いよいよ今回の本題、胃はどうして溶けないのか?解説していきましょう。

2.どうして胃は胃酸に溶かされないの?

ここまでのお話で胃の働きについては大体お分かりいただけたかと思います。では、なぜ強力な胃酸は自身の胃を溶かしてしまわないのでしょうか?

そこには大きく2つのポイントがあります。

まず1つめは胃の表面から粘膜が出ており、胃酸を中和しているのです。

そして2つめが、胃壁の細胞は分裂能力が高く表面の細胞が傷ついてもすぐに新しい細胞に変わることができるのです。

簡単に言えば、この2つのおかげで胃は溶かされずにすんでいるのです!

ではまず1つ目から詳しく見ていきましょう。

胃から出される粘液は非常にねばねばしておりその粘液にはアルカリ性である炭酸水素ナトリウムが含まれています。

この炭酸水素ナトリウムと胃液の成分である塩酸が反応し中性となるのです。

そして、ねばねばしているのは胃全体に膜を作り保護するためです。

さらさらだとすぐに落ちていっちゃいますよね。ある程度粘性があることで胃全体を守ってくれているのです。

また、この粘液は胃酸から守るだけだけではなくタンパク質分解酵素であるペプシンも変性させ失活させることで胃を守っています。

つまり、粘液は胃酸とペプシンの両方から胃を守ってくれているんですね!

2つめですが粘液で中和しきれない場合も時にはでてきます。そこで胃酸が猛威をふるって細胞を傷つけてしまったとします。

すると、胃の表面の細胞がどんどん分裂し新しく入れ替わってくれるのです。胃酸によって傷ついた細胞がすぐに新しくなってくれれば安心ですよね。

このようにアルカリ性の粘液による中和とペプシンの失活、そして、胃壁の細胞の修復力という大きく2つの胃のもつ能力によって自身の胃を溶かさないようにしているのです。

また、胃酸を分泌する時には自身の細胞が傷つかない工夫もあります。自分で作った塩酸にやられてしまったら元も子もないですよね!

胃酸を分泌する細胞は細胞内で塩酸を作るのではなく、水素イオンと塩素イオンを放出することで外で塩酸を作っているのです。

私たちの身体は本当に上手くできているように感じます。

3.世の中に溢れている謎の健康食品

世の中には科学を少し知っていればあり得ない商品が多くあります。

その代表は酵素食品。酵素はタンパク質ですので強力な胃酸によってその役割を失いますしペプシンによっても分解されます。

また、腸で吸収するには大きすぎるので分解されてアミノ酸の状態で吸収されるのです。

酵素を食べることで酵素を作る材料が補給されるのは間違いありませんが食べた酵素がそのまま体で働くことは考えにくいと言えます。

みなさん酵素の認識には気をつけましょう!

まぁ世の中には盗タンパク質といってキンメモドキのように餌から酵素(タンパク質)を獲得、蓄積し使用するという生き物もいます。

このメカニズムはまだ正確には明らかとなっていないのですが不思議なこともありますね。論文⇩

https://advances.sciencemag.org/content/6/2/eaax4942

4.さいごに

胃酸は強い酸性なので、食道に逆流してしまったりすれば守るすべがない食道はただれてしまいます。

これは逆流性食道炎と呼ばれてます。

ほかにも菌やストレスにって粘液の分泌が衰えてしまったり過剰に胃酸が出すぎると、胃を守れず損傷し胃潰瘍になってしまいます。

どちらもなってしまった場合大変ですので、病状が出た方はすぐに病院にいきましょう!

そのままにしておくと、胃に穴が空いてしまい内容物が漏れ出し、感染症などを引き起こした結果、最悪死に至ることもあります。

こうならないためにも日々体調やストレス、そして食事に気をつけなければいけませんね!

また、食べ物をよく噛むことで胃への負担が軽減されます。

いっぱいもぐもぐして胃を助けてあげましょう!

つくづく人間のからだってすごいなって思う今日この頃です。

本当によくできていますよね。

まぁ人間というか生き物は本当に魅力的なのです。