【パンの基礎知識】パンを膨らますイースト菌の正体とは?

食品の科学

焼きたてのパンって本当に香りも良いし、美味しいですよね。

皆様は朝はご飯派ですか?それともパン派ですか?

私は朝は食べない派なんですが、最近の日本人は勢力的にもう半々くらいなんじゃないですかね。

何でかと言いますと、スーパーに行けば驚くくらい菓子パンは充実しておりますし、町のパン屋さんには様々な種類のパンが売っているからです。

それだけ需要があるんですね。

では、そんな様々な種類が存在するパンなんですが、なぜ焼きたてのパンはあんなにも良い香りがして、モチモチに膨らんでいるのか?

皆様はご存知でしょうか?

実はその理由にはイースト菌が隠れているのです。

このイースト菌がパンの生地の中で発酵してくれるから、私たちは美味しいパンを食べることができているのです。

まぁパンを作ろうとしている方にするとそれは当たり前ですよね、、

しかし、あなたはイースト菌についてどれほど知っているでしょうか?今回はパンには欠かすことができないイースト菌について解説していこうと思います。

1.イースト菌

イースト菌とはそもそもどういうものなのか?

実は私たちと同じく生き物であり、ビールやパン作りには欠かせない存在なのです。

そして、このイースト菌は細胞核をもつ真核生物であり、真菌類に属しています。

また、イースト菌は酵母とも呼ばれ、出芽によって増える出芽酵母であり、そのなかでも私たちがパンやビールなどの食品に使うのは、Saccharomyces cerevisiae(S.cerevisiae)という種類のものです。

一般的に酵母やイースト菌というのはこのS.cerevisiaeのことを指しまして、当ブログでも同じようにこちらの種について説明していきます。

私たちはスーパーなどに行けば、ドライイーストとしてすぐにこのイースト菌を手に入れることができますが、そもそもは果物の表面や樹液に生息する菌です。

つまり、ブドウなどの果実の表面には野生の酵母菌が存在しているということですね。

その昔、ブドウを置いておくとワインになったのもこのイースト菌のおかげであり、人々はワインを飲んできました。

なんと紀元前8000年からワインが飲まれていたというんだから驚きですよね。

しかしですね、ワインができる理由がイースト菌にあったということを昔の人は知る余地もありませんでした。

なぜなら、イースト菌のような小さな微生物の存在が明らかとなったのは17世紀に入ってオランダのレーウェンフックが顕微鏡によって調べられてからであり、さらにその後、1879年になってやっとルイ・パスツールが微生物が発酵の原因であるということを突き止めたのです。

このようにイースト菌によってお酒やパンが飲食されていたのは相当昔であるにもかかわらず、イースト菌のおかげであるということが分かったのはごく最近の出来事であるというわけなのです。

2.アルコール発酵

ここまでの説明ではイースト菌がパンを膨らませたり、お酒を造ったりするのに役に立っていることはわかりませんよね。

もちろんそれは重要なことをまだ説明していないからです。

その重要なこと、それこそが『発酵』です。

私たちは呼吸をしています。

一体なぜ呼吸をしなければいけないのか?

それは、呼吸をしなければエネルギーを生産することができないからです。

同様にイースト菌もまた呼吸をしなければ生きることはできません。

しかし、イースト菌の場合、呼吸の仕方が人とは少し違うのです。

イースト菌は酸素がたくさんある条件下では人と同じように酸素を使用し、呼吸をします。

しかし、酸素が無かったら、人は死んでしまいますが、イースト菌の場合、『発酵』するのです。

つまり、イースト菌は酸素がない条件下で、生き残るために発酵しています。

そして、この時に出てくるのが二酸化炭素とエタノールであり、そのおかげで、パンは膨らみ、お酒ができるということなんですね。

また、このエタノールは焼成時に揮発して、メイラード反応と共にパン特有の匂いの元になっています。

3.アルコール発酵の過程

せっかくなので、イースト菌のアルコール発酵についてもう少し詳しく触れていきましょう。

アルコール発酵では糖を分解して、エタノールと二酸化炭素が作られます。

全体の反応式としては⇩のようになります。

C₆H₁₂O₆ → 2C₂H₅OH + 2CO₂

まず、第一段階として、解糖系と呼ばれる人と同じ反応が進みます。

C₆H₁₂O₆ + 2ADP + 2H₃PO₄ + 2NAD⁺ → 2CH₃COCOOH + 2ATP + 2NADH + 2H₂O + 2H⁺

ピルビン酸とエネルギーがここでできるわけですが、酸素が多ければ、この後はピルビン酸は水とCO₂に分解されてしまいます。

しかし、アルコール発酵ではここから

CH₃COCOOH → CH₃CHO ⁺ CO₂

ピルビン酸はアセトアルデヒドと、二酸化炭素に分解されてさらに

CH₃CHO + NADH + H⁺ → C₂H₅OH + NAD⁺

還元されてエタノールとなるのです。

このようにしてイースト菌は二酸化炭素とエタノールを出してくれ、私たちは美味しいパンやお酒を飲むことができているのです。

イースト菌に感謝!

4.発酵の温度

イースト菌は生き物なので、低温すぎても高温すぎても発酵は促進されません。

適温があるのです。

一般的に0~5℃ではイースト菌の活動が抑えられ、27~36℃で最も活動的になるとされています。

また、60℃を超えるとイースト菌も生き物なので、死滅してしまいます。

つまり、パンを焼けばイースト菌は全滅してしまうということですね。

では、パンを作る時にはイースト菌の最も活動的な温度にすべきだ!と思うかもしれません。

しかし、最近では低温発酵といいまして、わざと温度を下げてゆっくりと発酵させることがされていたりなど、単純にはいかないのがパン作りなのです。

低温発酵のいい所は朝一番で全ての生地を作らなくても良いというだけではなく、ゆっくりと発酵させることで、パンの構造を形成する『グルテン』の傷つきを少なくすることで、より美味しくなるとも考えられているそうです。

確かにバンバン二酸化炭素を出すと、一気に気泡が膨らみますもんね。

つまり、パン作りにおいてイースト菌の量と温度はめちゃくちゃ大切なのです。

5.さいごに

イースト菌は無くてはならない存在であるということがお分かりいただけたかと思います。

私たちが美味しいビールやパンを飲んだり食べたりできるのはイースト菌のおかげというわけなんですね。

昔の人は何も知らずにワインができたんだからびっくりだったでしょう。

また、小麦粉が膨らむのも謎だったんだと思います。

それが今では解明されているんだから科学はすごいなと思わされるわけです。

パンを作るのもそうですが、何かを利用するにはそのことについて学ぶことが一番の近道です。

また、今やっていることが直接的に関わらないことであっても、きっとそれが何かに繋がるはずです。

勉強することで視野を広げ、たくさんのことに活かしていきましょう。

勉強は楽しい!そう思える人が少しでも増えて欲しいですね。

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